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肺炎球菌ワクチン
栄養不良や体力が落ちている時、あるいは心不全、腎不全、慢性肺疾患、糖尿病、脳梗塞(こうそく)、悪性腫瘍など重い基礎疾患を有するひと、特に高齢者や脾臓摘出例では免疫力が低下して、感染症にかかりやすい。鼻や口から気管、さらに肺にいたる空気の通り道は気道と言うが、大気中の細菌やウィルスが侵入してくる。
冬季、早春のこの時期は、風邪やインフルエンザなど呼吸器疾患にかかりやすい。バリアとなっている気道上皮に炎症がおこると細菌が侵入しやすくなるため、高齢者では2次感染のため肺炎を合併しやすい。そして肺炎の起炎菌でもっとも多いのが肺炎球菌である。
肺炎球菌感染症は肺炎以外にも、髄膜炎、中耳炎、副鼻腔炎、菌血症などを来たす疾病である。以前はペニシリンがきわめて有効であったが、近年はペニシリン耐性肺炎球菌が増加している。しかし、肺炎球菌感染症はワクチン接種で予防できるのである。肺炎球菌性肺炎を防ぐには、まずは風邪やインフルエンザに罹らないようにすることである。そのためにはインフルエンザの予防注射を受ける。次いで肺炎球菌ワクチンの接種を受ける。肺炎になったとしても、菌血症(敗血症)への進展が阻止でき、重症化しにくいからである。
肺炎球菌は84種類にも分類されているが、ポリサッカライドからなる莢(きょう)膜を持つものが病原性を有している。現在使われているワクチン(ニューモバックス)は不活化ワクチンであるが、症例の八割に有効である。そして、65歳以上の老人ではほぼ70%にワクチンの予防効果が確認されている。
ワクチンは0.5ミリリットルを皮下あるいは筋肉内に接種する。10%前後に腫脹(ちょう)、発赤、硬結、局所熱感などの局所症状や、悪寒、頭痛、違和感、筋肉痛、関節痛などの全身症状が出現、1〜2%に37.5度以上の発熱が見られるが、これら反応はごく軽微であり安全である。接種後に血中抗体は平均3〜7倍上昇し、5年以上持続するので、最低5年は有効である。5年以上経過すれば、再接種もできる。
肺炎球菌ワクチンは我国では1988年に認可されたが、健保適用は2歳以上の脾摘出症例だけである。それ以外は自由診療となるので、自己負担で接種を受けることになる。費用はマチマチだが、10000円近くかかるようだ。それでも2002年に15万人が接種を受けたが、まだ65歳以上の人口の1.5%に過ぎない。米国の疾患管理センター(CDC)は、65歳以上の高齢者やハイリスクグループには肺炎球菌ワクチンをインフルエンザワクチンと併用して接種するよう勧めており、WHO(世界保健機構)も同意見である。米国では65歳以上の高齢者の半数以上が接種を受けている。
本稿は主として島田馨博士、松本慶蔵博士の論文を参考にした。
(別府 倫兄)
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