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脳腫瘍について
<脳神経外科医    藤津 和彦>


   今回は脳腫瘍について解説します。脳腫瘍と診断されれば大変深刻な気持ちになるのは当然です。しかしまず落ち着いてください。実は大部分の脳腫瘍は良性なのです。おなかや胸の腫瘍の大部分は胃癌、大腸癌、肺癌などの悪性腫瘍ですが、悪性の脳腫瘍は脳腫瘍全体の10分の1以下です。

  全脳腫瘍の約3分の1は髄膜腫と脳下垂体腫瘍と聴神経腫瘍などの良性腫瘍です。髄膜腫は脳の表面を覆っている髄膜から発生するものですが、手術で全摘すれば完治します。脳底の深い部分に発生する髄膜腫は手術が難しく、特別に頭蓋底髄膜腫と呼ばれます。脳下垂体腫瘍も頭蓋底腫瘍の1つですが、幸い、多くの場合は経鼻的小手術ですみます。著しく大きい場合は頭を開いて行う頭蓋底手術が必要となります。聴神経腫瘍は聴神経を被っている神経鞘という膜から出来る腫瘍です。多くは片側の聴力障害や耳鳴り、目まいなどで発症します。小さい場合は手術で聴力を温存することも可能ですが、大きい場合は顔面神経の損傷も問題になります。この腫瘍も頭蓋底手術が必要になります。

 次の3分の1は生まれつきの腫瘍で、その代表が頭蓋咽頭腫と呼ばれるものです。これも大変難しい頭蓋底手術が必要になります。悪性ではないのに再発しやすい腫瘍ですので、頭蓋底手術とガンマナイフやサイバーナイフと呼ばれる特殊な放射線治療を組み合わせる治療が行われます。

       これら頭蓋底髄膜腫、大きな脳下垂体腫瘍、聴神経腫瘍、頭蓋咽頭腫は頭蓋底腫瘍と呼ばれるもので、高度な技術を要する頭蓋底手術が必要となります。手術なしでは根治法はありません。ガンマナイフやサイバーナイフはあくまでも補助的手段で、手術と組み合わせてはじめて効果が期待できます。頭蓋底手術は脳外科手術の中でも特に高度の技量が要求されます。この分野に精通している脳外科医を厳選する必要があります。筆者は頭蓋底を専門にして25年近くなりますが、関東一円で一番の経験と成績を持っていると自負しています。

 さて、最後の残り3分の1がグリオーマ(神経膠腫)と呼ばれる脳自体から発生する腫瘍です。ただしグリオーマが全て悪性というわけではありません。病理学的には四段階(グレードT〜グレードW)に分けられます。グレードTでは手術で全摘できればほぼ完治しますがグレードV、Wでは手術でほぼ全摘し放射線療法を追加しても最長1年半しか生存できません。これがいわゆる悪性脳腫瘍(悪性グリオーマ、悪性神経膠腫)と呼ばれるものです。幸いにして脳腫瘍全体の10分の1以下なのです。ましてや脳ドックなどで偶然発見された脳腫瘍はまず良性と考えてよいでしょう。

◆今回ご寄稿頂いた藤津和彦先生は国立病院機構・横浜医療センター副院長で、脳手術の名手と言われている脳神経外科医です。関東一円でもっとも多く脳腫瘍と脳動脈瘤の手術を行っており、頭蓋低手術については我が国の第一人者として知られています。

 (別府 倫兄)

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