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前立腺癌だと言われたらどうしますか <順天堂大学教授 藤目 真>
前立腺癌(がん)は通常、腫瘍マーカーの高値あるいは腰痛などの転移の症状を契機として、その疑いがもたれ、最終的には生検と呼ばれる組織検査で診断が下されます。ご存知の方も多いことと思いますが、前立腺というのは精液の一部を作る分泌線で、膀胱(ぼうこう)のすぐ下方にあります。中を尿道という尿の排出路が通っていますので、前立腺にトラブルが発生すると、尿の出方に影響が出ることが少なくありません。
話を生検に戻しますと、生検では肛門から「すりこ木」のような形の超音波の機械を挿入し、すぐ前方にある前立腺を画面に写し出し、狙った部位に針を刺して少量の組織を採取します。これを病理医という専門の医師が見て、癌があるかどうか判断します。もし生検によって前立腺癌だと言われたとしたら、次には、癌がどこまで広がっているのかの検査が待っています。癌にはいろいろな癌がありますが、それぞれ転移しやすい場所があります。前立腺癌の場合は骨とリンパ節です。そこでX線CTやアイソトープを使った骨シンチグラムという検査を受けることになります。幸い検査の結果、「転移なし」ということになれば、前回ご紹介しましたように、5年以内に前立腺癌で命を落とす危険は極めて小さいということになります。
前立腺癌の治療は、手術療法、放射線療法、内分泌療法、待機療法の4つが基本ですが、4つの治療法には、それぞれ利点と欠点があり、これがベストと言えるものはありません。治療を考えるとき、他の部位の癌、例えば肺癌、胃癌などではまず命の長さを確保することが最優先となりますが、前立腺癌の場合、とくに転移のない前立腺癌では、命の長さはある程度保証されているといってよいので、治療法の選択がかえって悩ましくなります。
前立腺癌では、治療法の選択にあたって、蓄積された医学的なデータのほかに、個人がもっている哲学、生き方が考慮されるようになっています。ですから、患者さんの側でも、「命の長さ」だけでなくて「命(生活)の質」を考えて、治療をしたら自分の体がどんなふうになるのか、どんな毎日を送ることになるのか、前もって十分に考えておかなければなりません。せっかく得た命の長さが、苦しみの毎日になったのでは、かならずしも幸福とは言えなくなってしまうからです。治療に伴う生活の質の低下ということでは、排尿機能、排便機能、性機能などの障害が、しばしば問題となります。損なわれる機能の種類や危険の大きさは、治療法により異なっています。
前立腺癌になって、問われるのは、実は生き方なのかもしれません。担当医から、病気の性質や治療について十分に説明を受けたあと、あなたはどんな生き方を選ばれるのでしょうか。医療の目的は患者さんの幸福にあります。
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ご寄稿いただいた藤目真教授は前立腺がんの診断・治療の第一人者です。
(別府 倫兄)
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