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メタボリックシンドロームの舞台裏
循環器内科専門医 代田浩之


   最近の健康診断でおへそ≠フ周りを測った人は読者のなかにどのくらいいらっしゃるだろうか。男性では85センチ以上、女性では90センチ以上では要注意、それに血圧、血糖、脂質の3つの項目のうち2つ以上の異常があればメタボリックシンドロームである。メタボリックシンドロームの診断基準は平成17年に内科学会で発表され、医学用語の中でこれほど急速に社会に知られた言葉はかってないといわれている。平成18年には流行 語大賞にも選ばれたそうだが、では何故今メタボリックシンドロームなのか?

  メタボリックシンドロームは過食と運動不足によって起こる肥満が原因の病態で、心筋梗塞などの心臓と血管の病気や糖尿病の大きなリスクであることが分かっている。肥満と糖尿病の蔓延は日本など先進諸国だけではなく、発展途上国を含む世界中の問題になっている。WHOによれば、2003年から2025年までの間に世界の糖尿病は170%増加すると予測され、その原因が過栄養と運動不足によると考えられている。前述のように肥満と糖尿病は心臓病の大きなリスクであるので、その予防は待ったなしである。実際、心筋梗塞や狭心症などの心臓病の患者さんの中でこのメタボリックシンドロームの診断基準を満たしている患者さんは、私たちの施設でも1980年代には20%であったものが、最近では60%に達するようになっている。

 さて、発展途上国を巻き込んだ予防の方策が必要であるから、簡便な診断基準とシンプルな予防のメッセージが必要と思われる。その意味から今回のメタボリックシンドロームの基準はなかなか合目的といえる。メジャーでウエストサイズを測って、他の基本的な検診データと組み合わせるだけで診断できるからだ。その一方で、ウエストサイズの適正値の議論は医学会の中でも続いている。もともと女性のほうが男性よりも皮下脂肪が多く、内臓脂肪が少ないことが観察されており、問題となる内臓脂肪面積100平方センチのところでウエストサイズとの相関を見ると男性で85センチ、女性で90センチになったという報告がもとになっている。その後いくつかの施設から女性はもっと低く、男性はもっと高いほうがリスクの検出率がいいとの提言もされている。実際、世界糖尿協会では男性90センチと女性80センチをアジア人の値として推奨した。このことが、また議論を呼んでいるが、この議論はこれからより長期的な研究結果を蓄積して、それをもとに議論をして行くことでいずれ解決できるわけであるから、とりあえずは先ずこの基準で予防に向けて行動して行こうというのがいいように思われる。

 それが今年から始まる厚生労働省の特定検診、保健指導である。指導する医療保険者側には相当なプレッシャーがかかっていることも事実だが、日本人の健康を維持するために、いち早く予防の施策がとられたのは評価される。どのような効果を挙げるのか、当初の目的のように医療費削減につながるのかどうかを見守って行きたい。

 最近、街中に見かけるようになったAED(自動体外式除細動器)もそのための装置である。周囲の一般の人たちの一時救命処置(Basic Life Support=BLS)とAEDがこのような発症早期の心筋梗塞の人たちを救う。そして救急車、病院の救急室へと救命活動はつながっていく。いわゆる救命の連鎖である。今後、わが国の心筋梗塞は増加することが予想されている。その中で一般の方々を巻き込んだ救命活動であるこの救命の連鎖の役割は大きい。

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 代田先生は虎ノ門病院、米国メイヨークリニックを経て順天堂大学教授、ハートセンター長を兼務され、我国における冠動脈疾患の専門家として大変高名な先生です。


 (別府 倫兄)
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