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糖尿病と心筋梗塞
循環器内科専門医 代田浩之


   昨年の11月14日に東京タワーがブルーに照明されたのをご存じだろうか。この日は世界糖尿病デーで、ブルーはそのシンボルカラーである。インスリンを発見したフレデリックバンディングの誕生日で、国際糖尿病連合と世界保健機構が糖尿病の予防のためにこの日を策定した。2006年12月には国連でも糖尿病の全世界的脅威を認知する決議が行われた。

  我が国の糖尿病も世界の動向と平行して増加し続けており、現在は740万人と発表され、予備軍を含めると1620万人と言われている。もともと糖尿病は怖い病気といわれてきたが、それはいわゆる細小動脈症と呼ばれる細い血管を主に侵す腎臓病、眼の網膜症、末梢神経障害が起こるからと考えられてきた。事実、厚生労働省の統計によれば、糖尿病は血液透析や失明の原因として第1位である。近年ではインスリンなどの治療法の発達によってこの細い動脈の合併症はかなり予防できるようになってきたが、まだまだ怖い合併症と言わざるを得ない。

 一方、最近日本人の糖尿病の病型が少しずつ変わってきて、別の怖い合併症も増えてきたのではないかといわれている。欧米型の糖尿病とでもいうべきか、以前のような細い動脈硬化が起こる前から、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞のようにより太い血管が突然に詰まる症例が増えてきた。事実、急性心筋梗塞で入院した患者さんで糖尿病と診断を受けていない人に糖の負荷試験を受けてもらうと、糖尿病が10%その予備軍の耐糖能異常が40%に見つかる。これが問題である。

 腎臓病や網膜症は糖尿病になって血糖の高い状態が続くことによって発症してくるのに対して、心筋梗塞や脳梗塞などを起こす動脈硬化は本人が糖尿病と知らない間に、あるいは糖尿病になる前からひそかに進行しているのである。糖尿病になりかけ、あるいはそれよりもっと前から動脈硬化が進行するとなると、その予兆をみつけることがなかなか難しい。

 どうしたらそのような危険を回避できるか? 1つははやりのメタボリックシンドロームに気をつけることである。メタボリックシンドロームは心臓病や脳血管障害のリスクだけでなく糖尿病のリスクとしても重要だと考えられている。その上流には過食と運動不足による肥満がある。健康診断で糖尿病の前段階ですよとか、糖尿病になりかけているから注意しましようといわれて、「まだ糖尿病じゃないんですね」とほっとするのはいけない。大きな危険を抱えたと思って真剣に生活習慣の改善に取り組んでもらいたい。

 ウエストサイズと体重を気にして、少しだけカロリー過剰を見直す、ちょっと運動量を増やすことだけでもいい。少し努力するだけでも体重や血糖値はずいぶん違うものである。日本肥満学会は「さんさん運動」といって、3キログラムの減量と3センチのウエスト周囲径の短縮を掲げてキャンペーンを行っている。糖尿病予備軍といわれている読者の方々にも是非検討いただきたい。

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 代田先生は虎ノ門病院、米国メイヨークリニックを経て順天堂大学教授、ハートセンター長を兼務され、我国における冠動脈疾患の専門家として大変高名な先生です。


 (別府 倫兄)
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