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バセドウ病の治療について
東京女子医科大学大学院教授 佐藤幹二


   甲状腺(せん)ホルモンは基礎代謝を調節する重要なホルモンで、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によってコントロールされています。TSHは甲状腺にあるTSH受容体を刺激します。TSH受容体を刺激されると、甲状腺細胞はヨードを取り込んで甲状腺ホルモンを合成し、血中に分泌します。

  バセドウ病は、TSH受容体を刺激する抗体(このような自己抗体をTRAbと称してます)が生じて、甲状腺より甲状腺ホルモンが過剰に分泌されたため、動悸や頻脈や発汗が生じてくる病気です。いわば絶えずジョッギングしているような状態ですので、とにかく、疲れやすくなるのが特徴です。

 バセドウ病は自己免疫疾患ですので、根本的に治す治療法はありません。現行の治療法はすべて対症療法なのです。患者さんは甲状腺ホルモンが多すぎて困っているのですから、甲状腺ホルモンの合成を阻害する薬剤(抗甲状腺剤)を内服して、甲状腺ホルモンの血中濃度が正常範囲になるようにしていけば、全く健康な生活を送ることができるのです。

 抗甲状腺剤を内服していくと、白血球数が激減してしまう無顆粒球症という重篤な副作用が起こることがあります。内服開始して2―3カ月以内に1000人に2―3人の割合で確実に発症します。このため、抗甲状腺剤による治療を始めたら、最初の2―3カ月は2週ごとに白血球数を測定しながら、抗甲状腺剤を処方することになっております。通常、甲状腺ホルモン過剰状態は2―3カ月以内に正常化してきますので、抗甲状腺剤の投与量も次第に減らしていくことができます。甲状腺ホルモンを正常範囲になるように長期間にわたり維持していくと、不思議なことにTRAbが次第に減少してきます。TRAbが陰性となったら、バセドウ病は自然に治まったとみなして(これを自然寛解と称します)、抗甲状腺剤の内服を中止できます。内科的療法によって自然寛解に達するまでには、通常、1―2年ほどかかります。しかし、甲状腺が非常に大きく、TRAbも強陽性で、抗甲状腺剤を減量できないような場合には、抗甲状腺剤を数年以上続けても、自然寛解は望めない場合が多いのです。

 このような場合には、甲状腺亜全摘が勧められてきましたが、最近では放射線の使用量が大幅に緩和されましたので、放射能を含んだヨード(131I)による放射線療法が多くなってきました。131Iを含んだカプセルを外来にて1回内服するだけの、極めて簡単な治療法です(ただし、心不全や不整脈のある高齢者では、入院して治療した方が安全です)。

 バセドウ病は一般の内科医でも治療可能ですが、副作用がおきたり、自然寛解を望めないような場合には甲状腺専門医の受診をお勧めします。日本甲状腺学会のホームページ(thyroid.umin.ac.jp)で専門医名を自由に検索できますので、是非、参考にしてください。

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 今回は、特別企画として、甲状腺・副甲状腺疾患の第一人者である佐藤幹二教授(病態治療学分野)に最近のバセドウ病の治療法について解説していただきました。


 (別府 倫兄)
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