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慢性甲状腺炎(橋本病)の治療について 東京女子医科大学大学院教授 佐藤幹二
前回は、甲状腺機能亢(こう)進症(主にバセドウ病です)について解説しましたが、今回は、逆に甲状腺ホルモンが不足となる病態(甲状腺機能低下症)について解説します。
新陳代謝をコントロールする甲状腺ホルモンは、多すぎても少なすぎても困るので、丁度よい血中濃度になるように甲状腺刺激ホルモン(TSH)によってコントロールされております。血中のT4が下がってくると、脳下垂体からTSHが分泌されてきます。TSHは甲状腺細胞を刺激してヨードの取り込みを促進し、ヨードが4個ついたサイロキシン(以下T4と称します)を合成・分泌してきます。また血中のT4が高くなりすぎると、TSHの分泌は抑制され、次いでT4の分泌も抑制されますので、血中のT4濃度は丁度よい濃度になっているのです。前回お話したバセドウ病では、T4が過剰に分泌されているので、TSHの分泌は抑制されております。これとは逆に、血中のT4が低くなりすぎて、TSHが高くなった病態を甲状腺機能低下症と称します。大部分は自己免疫疾患である慢性甲状腺炎によるものです。慢性甲状腺炎は、明治時代に橋本策博士が詳細に病理所見を記載したので、世界的にも橋本病と呼ばれております。
橋本病は中年以降の女性に非常に多い疾患です。甲状腺に自分のリンパ球が入り込んで、自分の甲状腺細胞を徐々に壊していくのです。病初期には何の症状もありませんが、甲状腺が次第に破壊されてきて、T4の分泌が不足してくると、TSHが上昇してきます(TSHの正常値は0.4―4U/mL)。TSHがやや上昇した場合(10U/mL以内)では特に症状はないので、一般には経過観察のみで十分です。しかし、TSHが 10U/mL以上になってくると、新陳代謝が低下して高コレステロール血症などが生じてくるので、T4の補充療法を行います。橋本病がどんどん進行していくと(TSHは50―100U/mL以上になります)、全身の新陳代謝が低下するため、動作がにぶく、言葉も遅くなり、皮膚もカサカサとなり、寒がり、便秘がちとなり、疲れやすく、記憶力も減退し、顔貌も老けたようになり、なんとなく元気がなくなります。うつ病と間違われることもあります。
治療は、T4(商品名はチラーヂンS)を、ゆっくりと補充していくのみで十分です。通常、少量から開始し、1―2カ月ごとに少しずつ増量してTSHが正常範囲に入るようにします。橋本病は非可逆性の病気ですので、生涯にわたり、T4の補充療法を続けていく必要があります。
橋本病の診断は、甲状腺を触診すると、やや硬くて大きな甲状腺を触知することでほぼ見当がつきます。さらに、甲状腺に対する抗体が陽性であり、かつTSHが上昇していることにより簡単に診断できます。バセドウ病と異なり、橋本病の治療には、専門医を受診する必要はなく、一般の内科医で十分です。
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今回は、特別企画として、甲状腺・副甲状腺疾患の第一人者である佐藤幹二教授(病態治療学分野)に最近のバセドウ病の治療法について解説していただきました。
(別府 倫兄)
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